9月の災害時、多くの歯科医院で混乱が 見られました。 先ず、診療をするのか、しないのか。 この基準がとても難しい。 労務的に言えば、従業員は豪雨だろうが 、豪雪だろうが出勤する義務があります 。 車が動かなかろうが、電車が動かなかろ うが、何だろうが、とにかく決められた シフトに出勤することだけは従業員に課 された唯一と言っても過言ではない本当 に限られた義務なのです。 それを勝手に従業員が豪雨だからとか、 電車が止まったから来れないというのは 許されない行為なのです。 それは欠勤であり、給与控除の対象にも なりえますし、賞与減額や無断欠勤であ れば訓戒などの対象にもなりえます。も ちろん、就業規則にそのように定められ ていることが前提となりますが。 しかし、経営者側にも安全配慮義務とい う義務があります。 つまり、従業員を働かせるのであれば、 安全を確保しなければいけないというも のです。 豪雨の中、従業員を無理に出勤させて、 その途上で濁流に飲まれてしまったとい うことになれば、責任を問われかねませ ん。 じゃあ、どうやって安全が確保されてる かを判断すれば良いのでしょうか。 その基準を国は示していません。 歯科医院地域一番実践会ではコンサルタ ントの身の安全を守るために、災害時の 基準を社内外に公表しています。 基本的には避難指示が合った場合にはコ ンサルティングは中止です。スタッフも 出勤停止としています。 じゃあ、そのように豪雨にした場合のお 給料はどうなるのか? という問題があります。有給なのか、無 休なのか?ということです。 例えば、医院としては十分に安全は確保 できると判断して診療したとします。 しかし、来れる人と来れない人がいたら 、来た人にはお給料を払います。 来れなかった人には有給を当てるか、他 の日に振り返るか選択肢を与えればよろ しいかと思います。 逆に、医院として安全に配慮して医院を 休診にした場合が難しいのです。 これは従業員としては働けるのに、勝手 に医院が休診にしたという扱いになるの で、従業員には6割のお給料は支払う義 務が生じます。 今回の豪雨でも、休診にした医院の多く は10割支払ってることが多かったです 。そこまで本当はやる必要はないのです が、従業員との関係をそんなことでこじ らせるぐらいなら、払っちゃったほうが 良いかという考えですね。 これはあながち間違ってないと私は思い ます。 一度、持たれた不信感を後からお金で取 り戻すことはできません。 変な不信感を持たれるぐらいだったら、 払っちゃったほうが最終的に安いという ことは残業代を含めて非常に多いのです 。 もう1つの選択肢があります。 それは、豪雨のため、安全を確保できな いので休診にした場合、他の日に振替で 診療するという方法です。 これは直前の振替だとどこまでOKか微 妙な範囲ですが、労務的には問題ないか と思われます。詳細は社労士さんに相談 してみて下さい。 大事なのは、災害時に休診にする基準は どこなのか明確にすることです。 そして、休診にした場合、振替をするな らすると先に明示しておくことです。 後から言うと、「なんで!?」「ヒドく ない!?」とかメチャクチャ言われかね ませんので、注意して下さい。 それと、医院が災害に巻き込まれてしま い、一定期間、休診せざるを得なくなっ てしまった場合です。 その場合は、医院都合の休診なので6割 の賃金を支給する必要があるかと思いま す。 災害時には状況が混乱します。情報も錯 綜します。そして、人はとてもネガティ ブになりやすくなります。 災害になってから対応するのではなく、 予め、災害を想定して災害時の労務規定 を作っておくことをオススメします。